ナベヅル
ナベヅル(鍋鶴、Grus monacha)は、ツル目ツル科ツル属に分類される鳥類。
全長約96.5cmの小形のツルであり、クロヅル(約114cm)よりやや小さい。
夕方、太陽が地平線に隠れた頃・・・塒に・・・
雄雌・・・一番のみ・・・
寝る前に、鳴き交わしながら・・・羽を広げて・・・
分布
中華人民共和国東北部、ロシア東南部、モンゴル北西部などで繁殖し、冬季になると日本、
おり、全体の90%近くが鹿児島県出水市で冬を越す。
形態
全長約91-100センチメートル、翼開長160-180センチメートル。翼長48-58cm、嘴峰長9.3-
10.7cm、跗蹠長20-23cm。体重雄3.28-4.87kg、雌3.4-3.74kg。雌雄同色。成鳥は頭頂から
眼先にかけて黒く細い毛状の羽毛に覆われ、頭頂の羽毛がなく裸出した部分は赤色であ
る。頭部から頸部にかけての羽衣は白い。種小名 monacha はラテン語で「修道士の」の意
で、頭部から頸部にかけての羽衣が修道士がかぶっていたフードのように見えることに由
来する。体部の羽衣は灰黒色。和名は胴体の羽衣の色が鍋についた煤のように見えるこ
とに由来する。三列風切が長く房状であり、静止時には尾羽が三列風切で覆われる。風切
羽は黒い。雨覆は灰黒色で、雨覆より風切羽のほうが暗色であるが、飛翔時においてその
差は不明瞭である。虹彩は赤または赤褐色。くちばしは黄色みがあり、基部は灰褐色で、先
端は淡黄褐色。足は黒か黒褐色または緑黄色。幼鳥や若鳥は、頭頂に黒色や赤色の斑は
なく、頭部から頸部が黄褐色みを帯びており、眼の周りは黒色で、体は成鳥より黒い。
生態
沼地、湿原、河口、干潟、農耕地などに生息する。食性は雑食で、植物の根、昆虫、両生類
などを食べる。越冬地では、水田の刈跡でイネの二番穂を採食するほか、出水ツル渡来地
羽(うち幼鳥1-2羽)でおり、雌雄が跳ね上がったり、くちばしを上にして鳴き交わしたりする行
動が見られたりもする。ときに数十羽を越える群れにもなる。鳴き声は「クールルン」や「クル
ルー」で、幼鳥は「ピィー」と鳴く。ディスプレイ時には雌雄が「コーワッカ」または「クーカッカッ
」と鳴き交わす。しかし繁殖地においてはあまり鳴かないとされる。シベリア南東部のレナ川
東北部など、タイガ地域で繁殖する。森林地帯内の湿原に雌雄で巣を作り、5月に2個の卵を
産む。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は27-30日。雄は生後4-5年、雌は生後2-3年で性成熟
する。1970年頃より、ナベヅルとクロヅルのつがいが1-2羽の幼鳥とともに出水ツル渡来地に
飛来し、その後も通称ナベクロヅルと呼ばれる交雑種が渡来しており、繁殖地域もシベリアの
一部でクロヅルと重なっている。
日本への渡り
日本では、ナベヅルは「くろづる」という名前で鎌倉時代より知られており、江戸時代には全国
各地に渡来し、『和漢三才図会』などの玄鶴(黒鶴)もナベヅルとされる。明治以降は鹿児島県、
いる。それ以外の地域においても、ときに少数が越冬する。鹿児島県出水平野の渡来数は、第
二次世界大戦が始まる1939年(昭和14年)には3,435羽を記録したが、戦時中より減少し、戦後
1947年(昭和22年)には250羽となった。しかしその後、1959年(昭和34年)に始まった人工給餌
などの保護活動や、他の越冬地の消失により急激に渡来数が増加し、2000年(平成12年)には
以来、徐々に減少し、2000年(平成12年)には18羽となった。日本には通常10月中旬に渡来し始
め、3月中旬に渡去するが、4月上旬まで留まることもある。
人間との関係
農作物を食害する害鳥とみなされることもある。山口県八代のナベヅルは、日本初の禁猟対象
(大正10年)3月3日に国の天然記念物に指定された。また、その越冬地は、「鹿児島県のツルお
よびその渡来地」として1952年(昭和27年)3月29日、「八代のツルおよびその渡来地」として195
に公募により指定されている。主な越冬地である出水平野では他種も含め多数の個体が飛来し
過密状態になっていることから、感染症による生息数の激減が懸念されている。そのことから複
るなど、越冬地を分散させようとの試みも始まっている。
- 中国 - 国家一級重点保護野生動物